マイホームのイメージ画像

「夢のマイホームを購入した!」

 …不動産取引は人生における大きな出来事です。しかし、契約書を交わし、代金を支払っただけでは、法的に「この不動産は私のものだ!」と誰に対しても主張できるわけではないことをご存知でしょうか?

 そこで重要になるのが「登記」です。そして、登記を考える上で切っても切れないのが「民法177条の第三者」というキーワード。「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、ご安心ください。この記事では、司法書士法人槐事務所が、不動産売買における登記の重要性と、民法177条が定める「第三者」について、できるだけ分かりやすく解説します。

不動産の「登記」って何?なぜ必要なの?~第三者への対抗要件~

法務局のイラスト

 不動産の登記とは、その不動産が「誰のものか」「どんな権利がついているか(例:住宅ローンで抵当権がついているなど)」といった情報を、法務局の登記簿という公的な帳簿に記録することです。

 そして、この登記は「第三者への対抗要件」とされています。 「対抗要件」とは、簡単に言うと、当事者(例えば売主と買主)以外の人(=第三者)に対して、「この不動産の所有権は私にありますよ!」と正々堂々と主張するための法的手段のことです。契約を結んだだけでは、当事者間では有効でも、第三者にはその権利を主張できない場合があるのです。先に購入代金を支払ったとしてもです。

登記は早い者勝ち?~不動産の「二重譲渡」と登記~

二重譲渡の例

 「登記が対抗要件」という原則を理解する上で、典型的な例が「二重譲渡」です。 例えば、売主Aさんが、同じ不動産をBさんにも、Cさんにも売却してしまったケースを考えてみましょう。

  • BさんはAさんと5月25日に売買契約を結び、代金も支払いました。まだ登記をしていません。
  • その後、CさんもAさんと5月26日に売買契約を結び、代金も支払い、さらに先に登記を備えました

 この場合、原則として、先に登記を備えたCさんが、Bさんに対して「この不動産の所有者は私だ」と主張できます。たとえBさんが先に契約し、代金を支払っていても、登記がなければCさんには勝てないのが基本です。これが「登記は早い者勝ち」と言われる所以です。

 より具体的には、いち早く登記を申請した方の勝ちです。ですから、私たち司法書士は、確実に、少しでも早く登記を申請できるように、不動産売買の締めくくり(売買代金の決済)を確かなものにするために、念入りに準備をして万全の体制作りをします。

「第三者」って誰のこと?~民法177条の「第三者」~

 民法177条では、

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

と定められています。

 この「第三者」とは、具体的にどのような人を指すのでしょうか? 法律用語では「登記の欠缺(けんけつ:登記がないこと)を主張する正当な利益を有する者」と説明されます。…なんだかまわりくどいですよね!

 もっと噛み砕いて言うと、「登記がされていないことによって、自身の権利が不安定になったり、不利益を被ったりする立場にある人」 とイメージすると分かりやすいかもしれません。先の二重譲渡の例で言えば、登記をしていないBさんはCさんに自分が所有者であることを主張できません。

 しかし、売主のAさんには、自分が所有者であることを主張できます。Aさんは売主なので買主のBさんに登記が無いことを主張する正当な利益が無いからです。 (ちなみに、相続人は「第三者」にはあたりません。被相続人の権利や義務(被相続人の売主Aさんの立場や登記を買主さんに移転する義務)を相続しているためです。)

「善意の第三者」って聞いたことあるけど?~不動産二重譲渡の場合の善意と悪意~

 「善意の第三者」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。法律でいう「善意」とは「ある事実を知らないこと」、「悪意」とは「ある事実を知っていること」を指します。

 不動産の二重譲渡の場合、驚かれるかもしれませんが、原則として、買主が「悪意」(つまり、最初の売買の事実を知っていた)であっても、先に登記を備えれば権利を主張できます。 先程の条文にも、「第三者」とは書かれていますが、「善意」とか「悪意」とかは書かれていません。例えば、先の例でCさんが「AさんがBさんにも売っていること」を知っていた(悪意だった)としても、Cさんが先に登記をすれば、CさんがBさんに対して所有権を主張できるのが原則なのです。

ちょっと待った!「背信的悪意者」には登記がなくても勝てる?

 しかし、上記の原則には例外があります。それが「背信的悪意者(はいしんてきあくいしゃ)」の存在です。 これは、単に「知っていた(悪意だった)」というだけではなく、著しく不誠実で、社会のルールに反するようなやり方で登記を得た者を指します。たとえば、先ほどの例でいえば、買主Bさんは、買主Cさんが背信的悪意者だったとすれば、先にCさんが登記を済ませたとしても、自分が所有者であることを主張することができます。

背信的悪意者の例:

詐欺師の男性のイラスト
  • 最初の買主を困らせる目的で、積極的に売主に働きかけ、不当に高い値段で買い取って登記を移した。
  • 最初の買主が登記を備えていないことを奇貨として、詐欺まがいの手段で売主から不動産を買い取り登記した。

 このような「背信的悪意者」に対しては、たとえ先に登記を備えていなくても、最初の買主は「その登記は無効だ!」と主張できる場合があります。これは、法律が著しく不公平な結果を是正しようとする現れと言えるでしょう。

登記で決まるのは二重譲渡だけじゃない!

 早い者勝ち(登記の先後によって権利の優劣が決まるの)は、二重譲渡(所有権の帰属)の問題だけではありません。例えば、以下のようなケースでも登記が重要になります。

  • 不動産を購入した人と、その不動産に抵当権(住宅ローンなどでお金を借りる際の担保)を設定した人がいる場合
  • 同じ不動産に複数の抵当権が設定された場合
  • 不動産が差し押さえられた場合と、その不動産を購入した人がいる場合

 これらの場合も、原則として登記の先後によって誰の権利が優先されるかが決まります。

司法書士はあなたの不動産取引のサポーターです!

 ここまで読んでいただいて、「登記って複雑で大変そう…」と感じられたかもしれません。しかし、ご安心ください。私たち司法書士は、このような複雑な不動産取引において、買主様の権利が無事に登記され、安心して新しい生活をスタートできるよう、専門家としてお手伝いをするのが仕事です。

 具体的には、不動産の売買を受任すると、以下のような作業をします。

  • 売主様が本当にその不動産の所有者か、権利証(現在は登記識別情報通知)をお持ちかなどを確認します。
  • 登記簿上の売主様の住所・氏名に変更がないか確認し、変更があればその準備を行います。
  • 売主様に住宅ローンが残っている場合、金融機関と連携し、売買代金でローンを完済し、抵当権を抹消する登記の手続きの準備をします。
  • 買主様が住宅ローンを利用して不動産を購入される場合、金融機関(抵当権者)と連携し、抵当権設定登記の手続きを手配します。
  • 買主様の費用負担が少しでも軽くなるよう、一定の要件を満たすマイホームであれば「住宅用家屋証明書」という書類の取得をお手伝いし、登録免許税(登記にかかる税金)の軽減措置が受けられるよう手配します。

 これらは一部ですが、安全・確実に不動産の権利が移転されるよう、売買の決済(代金の支払いと物件の引渡し)に立ち会い、必要な登記申請を迅速に行います。

まとめ~安心して不動産取引をするために~

ガッツポーズをする二人のイラスト

 不動産売買における「登記」と「民法177条の第三者」の考え方は、ご自身の権利を守る上で非常に重要です。しかし、その内容は専門的で複雑な部分も多くあります。

 「このケースはどうなるの?」「自分は大丈夫だろうか?」 もし、不動産取引に関して少しでもご不安なこと、分からないことがございましたら、どうぞお気軽に私たち司法書士法人槐(えんじゅ)事務所にご相談ください。お客様の状況を丁寧にお伺いし、最善の方法をご提案させていただきます。

 安心して大切な一歩を踏み出せるよう、私たちが全力でサポートいたします。

初回のご相談は無料です!042-319-6127受付時間 平日 9:00-18:00

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